親の物忘れや言動の変化が気になるようになると、「もしかして認知症では?」と不安になることがあります。
同じ話を何度もするようになったり、これまでできていたことに時間がかかるようになったりすると、家族としては気になりますよね。
ただ、こうした変化があるからといって、すぐに認知症と決まるわけではありません。まずは最近どんな変化があったのか、生活の中で困っていることがないかを整理してみることが、その後の相談や受診につながります。
この記事では、親が「認知症かも」と感じたときに最初に確認したいことや、地域包括支援センター・かかりつけ医などの相談先、本人が受診を嫌がるときの考え方について、わかりやすく紹介します。
親が認知症かもと思ったら、まずは様子を整理する
親の様子に「少し変わったかな」と感じることがあっても、それだけで原因を判断するのは難しいものです。
まずは、「いつ頃から」「どんな場面で」「どのような変化があったのか」を落ち着いて整理してみると、その後の相談もしやすくなります。
ここでは、親の認知症が気になったときに、最初に確認しておきたいポイントを見ていきます。
いつから、どんな変化があるのかを振り返る
「最近、同じことを何度も聞くようになった」「約束を忘れることが増えた」など、気になることがあれば、まずは具体的な出来事を振り返ってみましょう。
そのとき、「物忘れが増えた」というだけでなく、いつ頃から、どんな場面で、どのくらいの頻度で起きているのかまで整理しておくと、変化が見えやすくなります。
たとえば、
- 同じ話を短い時間に何度もする
- 約束や予定そのものを忘れている
- 同じ物を何度も買ってくる
- 慣れている場所で道に迷うことがある
- 以前より家事や手続きに時間がかかるようになった
- 以前より怒りっぽくなったり、性格が変わったように感じたりする
- 外出や趣味への関心が薄れ、何となく元気がなくなった
といったことです。
気づいたことを簡単にメモしておくと、地域包括支援センターや医療機関へ相談するときにも、状況を伝えやすくなります。
生活で困っていることがないか確認する
物忘れそのものだけでなく、普段の暮らしにどのような変化が出ているかも確認してみましょう。
たとえば、薬を飲み忘れる、支払いが滞る、食事の準備がうまくできなくなるなど、これまで問題なくできていたことに少しずつ変化が出る場合があります。
確認したいのは、次のようなところです。
- 食事や買い物がこれまで通りできているか
- 薬を決められた通りに飲めているか
- お金や通帳、支払いの管理ができているか
- 電話や家電を以前と同じように使えているか
- 外出したときに迷ったり、帰宅できなくなったりしていないか
すべてを細かくチェックするというより、「以前と比べて変わったところはないか」という視点で見てみると分かりやすいです。
離れて暮らしている場合は、本人の話だけでなく、近くに住む家族や普段関わっている人から様子を聞くことで、気づけることもあります。
家族だけで「認知症」と判断しなくてもいい
気になる変化がいくつか重なると、「やっぱり認知症なのでは」と考えてしまうこともあります。
ただ、物忘れや意欲の低下、ぼんやりする様子などは、認知症だけに見られるものではありません。体調の変化や服用している薬、睡眠不足などが影響していることもあります。
そのため、家族が「認知症かどうか」を決めることよりも、気になる変化が続いていることを相談先に伝えることを考えてみましょう。
「いつ頃から」「どんな変化があったか」「生活で困っていることはあるか」が整理できていれば、相談するときにも役立ちます。
認知症と加齢による物忘れの違いについては、別の記事で詳しく紹介しています。
親の認知症が気になったときの相談先
親の変化が気になっても、「まずどこに相談すればいい?」「病院に行くなら何科?」と迷うことがあります。
認知症が疑われるときは、地域包括支援センターに相談したり、かかりつけ医に相談したり、必要に応じて専門の医療機関を受診したりと、いくつかの選択肢があります。
ここでは、それぞれの相談先の特徴と、どんなときに利用しやすいのかを紹介します。
地域包括支援センター
「認知症かどうかはわからないけれど、最近の親の様子が気になる」というときに相談できるのが、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしや介護、健康、福祉などについて幅広く相談できる地域の窓口です。認知症と診断されていない段階でも、気になっていることや生活の様子を伝えながら相談できます。
相談内容に応じて、医療機関や介護サービスを案内したり、認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなど、必要な支援につないだりする役割もあります。
「病院に行くほどなのかわからない」「本人が受診を嫌がっている」など、次にどう動けばいいか迷っているときにも相談しやすい場所です。
地域包括支援センターについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
かかりつけ医
普段から診てもらっているかかりつけ医がいる場合は、まず相談してみる方法もあります。
これまでの病気や体調、服用している薬などを把握している医師であれば、最近の変化について相談しやすく、必要に応じて専門の医療機関につないでもらうこともできます。
受診するときは、「最近もの忘れが増えた」というだけでなく、いつ頃から、どんな変化があり、生活にどのような影響が出ているのかを伝えると、状況を共有しやすくなります。
認知症が疑われる人への早期の対応では、かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなどが連携して支援することが想定されています。

もの忘れ外来・認知症疾患医療センター
認知症について専門的に診てもらいたい場合は、もの忘れ外来や認知症疾患医療センターという選択肢もあります。
もの忘れ外来は、もの忘れや認知機能の変化について診察する専門外来です。医療機関によって診療体制は異なりますが、認知症かどうかだけでなく、症状の原因について調べてもらうことができます。
認知症疾患医療センターは、認知症の専門医療相談や鑑別診断、地域の医療・介護機関との連携などを担う医療機関です。ここでいう「鑑別診断」とは、認知症の種類や、ほかの病気による症状ではないかなどを調べていくことです。
どこを受診すればよいかわからない場合は、最初から自分たちだけで専門医療機関を探さなくても、地域包括支援センターやかかりつけ医に相談しながら受診先を考えることもできます。
本人が病院に行きたがらないときはどうする?
認知症が気になっていても、本人が病院に行きたがらないことはあります。
家族としては受診してほしいと思う一方で、強く勧めるほど本人が身構えてしまうこともあります。
そんなときは、無理に話を進めるのではなく、本人が受け入れやすい伝え方を考えたり、家族から先に相談したりする方法があります。
本人が受診を受け入れやすい伝え方を考える
認知症が気になって受診を勧めても、本人が嫌がることは珍しくありません。
「認知症と診断されたらどうしよう」「自分はまだ大丈夫なのに、病気だと決めつけられたくない」など、受診に不安や抵抗を感じる理由は人それぞれです。家族から「最近、物忘れが増えたから病院へ行こう」と言われることで、自分を否定されたように感じる人もいます。
そのため、認知症の検査を前面に出すよりも、本人が気になっている体調や困りごとから話を始めるほうが、受診につながりやすいことがあります。
たとえば、「最近少し疲れやすそうだから、一度先生に相談してみよう」「薬のこともあるから、体調を見てもらおう」など、その人が納得しやすい伝え方を考えてみます。
大事なのは、受診させることだけを目的にするのではなく、本人が何を不安に感じ、なぜ行きたくないのかにも目を向けることです。
本人が受診しなくても、家族から相談できる
何度話しても本人が受診を受け入れないと、「本人が行く気になるまで待つしかない」と思ってしまうかもしれません。
しかし、本人が受診していない段階でも、家族から地域包括支援センターなどに相談することができます。
相談するときは、「病院に行ってくれない」ということだけでなく、いつ頃からどんな変化があるのか、生活で困っていることはないか、本人が受診を嫌がる様子なども伝えてみましょう。
状況によっては、医療機関へのつなぎ方を一緒に考えたり、認知症初期集中支援チームなどの支援につながったりすることもあります。
本人をどう説得するかを家族だけで考え続けるのではなく、受診につなげる方法そのものを相談するという選択肢もあります。

私が勤める地域包括支援センターでも、『受診を勧めても本人が行きたがらない』という相談はよくあります。本人の抵抗感も考えながら、どうつなげるかを一緒に考えていきます。
相談すると、その後どんな支援につながる?
相談したあとは、本人の状態や生活の困りごとに応じて、医療や介護、地域の支援につながっていきます。
すぐに介護サービスを利用するとは限らず、まずは受診や見守りから始まることもあります。
ここでは、相談後に考えられる主な支援について見ていきます。
必要に応じて医療につながる
認知症が疑われるときに医療機関を受診する大きな目的は、症状の原因を調べ、必要な治療につなげることです。
物忘れや判断力の低下などがあっても、その原因がすべて認知症とは限りません。たとえば、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など、治療によって症状の改善が期待できる病気が隠れていることもあります。
また、認知症と診断された場合でも、種類や症状に応じて薬による治療を始めることで、進行を緩やかにしたり、生活の中で困っている症状を和らげたりできることがあります。
早めに受診することで、原因を確認し、その人に合った治療や今後の生活について考えやすくなります。
介護保険や地域の支援につながる
認知症があっても、すぐに介護サービスが必要になるとは限りません。
一方で、服薬や買い物、食事など日常生活に支援が必要になってきた場合は、介護保険の申請やサービスの利用を検討することもあります。
介護保険では、要介護認定を受けたうえで、本人の状態に応じてデイサービスや訪問介護などを利用できます。また、自治体によっては見守りや認知症に関する相談など、地域独自の支援が用意されていることもあります。
「今すぐ何かのサービスを使いたい」という段階でなくても、これから利用できる支援を知っておくことで、生活に変化があったときにも相談しやすくなります。
介護保険の仕組みや申請については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
家族への支援につながることもある
認知症について悩むのは、本人だけではありません。
これからの生活や介護のことを考えるなかで、「どう接したらいいのだろう」「この先、自分がどこまで支えられるだろう」と家族が不安を感じることもあります。
地域によっては、認知症の本人や家族、地域の人、専門職などが交流できる「認知症カフェ」が開かれています。家族会や電話相談など、家族が悩みを相談したり、同じような経験を持つ人と話したりできる場もあります。
認知症への支援は、本人のためだけのものではありません。家族も相談しながら、無理のない関わり方を考えていくことができます。
認知症が気になったときは、早めの相談を
親の変化が気になったときは、認知症と決まっていなくても相談できます。
「まだ相談するほどではないかも」と迷う段階でも、地域包括支援センターやかかりつけ医に話してみることで、次にどうすればよいか見えてくることがあります。
家族だけで抱え込まず、困ったときに相談できる場所を早めに知っておくと安心です。





