年齢を重ねると、「名前がなかなか思い出せない」「何を取りに来たのか忘れてしまった」といった物忘れが増えてきます。
そのたびに、「もしかして認知症では?」と心配になったことがある方もいるのではないでしょうか。
年齢による物忘れと認知症には、いくつかの違いがあります。
この記事では、それぞれの特徴や受診を考えたいサイン、病院で相談する目安について分かりやすく解説します。
年齢による物忘れと認知症の違い
年齢を重ねると、誰でも物忘れは増えていきます。
一方で、認知症による物忘れには、年齢による物忘れとは異なる特徴があります。
ここでは、それぞれの違いについてわかりやすく紹介します。
年齢による物忘れの特徴
年齢を重ねると、誰でも少しずつ物忘れは増えてきます。これは脳の老化による自然な変化であり、物忘れがあるからといって、すぐに認知症というわけではありません。
例えば、
- 「昨日の夕飯のおかずが思い出せない」
- 人の名前がすぐに出てこない」
- 「メガネをどこに置いたか忘れてしまう」
このような経験は、多くの方に見られます。
しかし、「昨日カレーを食べた」と聞けば思い出したり、家の中を探しているうちにメガネが見つかったりすることも少なくありません。
つまり、出来事の一部を忘れていても、きっかけがあれば思い出せることが、年齢による物忘れの特徴です。
また、日常生活に大きな支障がなく、買い物や料理、家計の管理など、これまでどおりの生活を送れている場合は、過度に心配しすぎる必要はありません。
「忘れること」そのものではなく、忘れ方や、生活への影響を見ることが大切です。
認知症による物忘れの特徴
認知症による物忘れは、年齢による物忘れとは「忘れ方」が異なります。
例えば、年齢による物忘れでは「昨日の夕飯のおかずが思い出せない」ことがありますが、認知症では夕飯を食べたこと自体を忘れてしまうことがあります。
また、同じ話を何度も繰り返したり、約束をしたこと自体を忘れてしまったりすることもあります。本人には忘れている自覚が少ない場合もあり、「そんな話は聞いていない」と言われて、家族が戸惑うことも少なくありません。
さらに、認知症では物忘れだけでなく、これまでできていたことが少しずつ難しくなっていくことがあります。
例えば、お金の管理や料理の手順が分からなくなったり、慣れた道で迷ったりするなど、日常生活に影響が現れることがあります。
もちろん、このような変化があったからといって、必ず認知症とは限りません。ほかの病気や体調の変化が影響していることもあります。

認知症を疑うきっかけは「物忘れ」そのものより、「その人らしさが少し変わった」という家族や近所の方の気付きであることが少なくありません。
こんな変化が見られたら受診を考えましょう
物忘れがあるからといって、すぐに認知症とは限りません。
しかし、これまでできていたことが難しくなったり、生活の中で気になる変化が増えたりした場合は、一度医療機関への相談を考えてみましょう。
ここでは、受診を検討したい主なサインをご紹介します。
今までできていた家事が難しくなった
認知症では、物忘れだけでなく、これまで当たり前にできていた家事が少しずつ難しくなることがあります。
例えば…
- 毎日作っていた料理の手順が分からなくなった
- 同じ調味料を何度も入れてしまう
- 掃除や片付けが思うようにできなくなった
- 公共料金の支払いを忘れる
もちろん、疲れていたり、体調が悪かったりして家事が思うようにできない日は誰にでもあります。一度だけの失敗で心配する必要はありません。
気になるのは、同じようなことが繰り返される場合や、以前と比べて明らかに変化が見られる場合です。
家事は、「覚える」「順番を考える」「判断する」など、さまざまな認知機能を同時に使っています。そのため、家事の変化は認知症の初期に気付きやすいサインの一つとされています。
日常生活で気になる変化が増えた
認知症では、物忘れだけでなく、日常生活のさまざまな場面で変化が見られることがあります。
例えば…
- 慣れている道で迷うことがある
- 約束の日時や予定を何度も間違える
- 同じ話を繰り返すことが増えた
- 身だしなみや着替え、入浴に気を配らなくなった
- 趣味や外出への関心が薄れた
- 表情や会話の様子、人との接し方が以前と変わった
こうした変化は、本人よりも家族や身近な人が先に気付くことも少なくありません。
もちろん、加齢や体調の変化、ストレスなどが影響している場合もあります。しかし、以前と比べて気になる変化が続いている場合は、一度医療機関へ相談することをおすすめします。
認知症かもしれないと思ったら、まずは病院へ
「もしかして認知症かもしれない」と思っても、自己判断する必要はありません。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
ここでは、受診できる医療機関や、診断を受けることで分かることについてご紹介します。
もの忘れ外来や脳神経外科などを受診しましょう
認知症が気になる場合は、もの忘れ外来や脳神経外科、脳神経内科などを受診しましょう。
お住まいの地域によっては、もの忘れ外来がない場合もあります。その場合は、かかりつけ医に相談すると、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらえます。
医療機関では、症状や生活の様子について話を聞いたり、認知機能の検査や必要に応じて画像検査、血液検査などを行ったりしながら、原因を調べていきます。
受診の際は、本人だけでなく、普段の様子を知っている家族が一緒に受診すると、生活の変化を医師へ伝えやすくなります。
「まだ早いかもしれない」と迷う段階でも構いません。気になることがあれば、まずは相談することが大切です。
受診時に家族が伝えるとよいこと
- いつ頃から変化が見られるようになったか
- どのような場面で困ることが増えたか
- 本人が気付いていない変化はあるか
- 持病や服用している薬
診断を受けることで分かること
「認知症と診断されるのが怖い」と感じて、受診をためらう方は少なくありません。
しかし、受診の目的は認知症と決めつけることではなく、症状の原因を調べることです。
物忘れや判断力の低下は、認知症だけが原因とは限りません。薬の副作用や脱水、甲状腺の病気など、適切な治療によって改善が期待できる病気が隠れていることもあります。
また、認知症だった場合でも、早い段階で診断を受けることで、症状の進行を緩やかにする治療を始められる場合があります。
さらに、本人の希望を大切にしながら、これからの暮らし方や利用できる支援について、家族と一緒に考える時間を持つことができます。
認知症かどうかを一人で悩み続けるよりも、まずは原因を知ることが大切です。早めの受診は、これからの生活を考えるための第一歩につながります。
まとめ
年齢を重ねると、誰でも物忘れは増えていきます。しかし、認知症による物忘れには、年齢による物忘れとは異なる特徴があります。
大切なのは、一つひとつの症状にとらわれるのではなく、「以前と比べて変化があるか」という視点で見ることです。
「もしかして認知症かもしれない」と不安を抱えたまま一人で悩む必要はありません。気になる変化があれば、早めに医療機関へ相談することが、原因を知り、これからの暮らしを考える第一歩になります。


