「介護保険」という言葉は聞いたことがあっても、実際にどのような制度なのかを詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。
介護保険は、介護が必要になったときに利用できる大切な制度です。
今は元気に過ごしていても、親の介護が必要になったり、自分自身が病気やけがで支援を必要としたりする可能性は誰にでもあります。
そんな時に慌てないためにも、介護保険の基本的な仕組みを知っておくと安心です。
この記事では、介護保険とはどのような制度なのか、どんな人が利用できるのか、利用するにはどうすればよいのかを、初めての方にも分かりやすく解説します。
介護保険とは?
介護保険は、介護が必要になった人やその家族を支える制度です。
年齢を重ねると、病気やけが、認知症などによって、これまで通りの生活が難しくなることがあります。そんな時に、介護サービスを利用しながら住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるようにつくられました。
まずは、介護保険がどのような制度なのか、基本的な仕組みから見ていきましょう。
介護が必要になった人を社会全体で支える制度
介護保険は、介護が必要になった人やその家族を社会全体で支えるためにつくられた制度です。
以前は、家族が介護を担うのが当たり前と考えられていました。しかし、高齢化や核家族化が進み、家族だけで介護を続けることが難しい世帯も増えています。
そこで2000年にスタートしたのが介護保険制度です。介護が必要になった時に、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなど、さまざまなサービスを利用できるようになりました。
介護保険は、単に介護を受けるための制度ではありません。できることは自分で続けながら、その人らしい生活をできるだけ長く続けられるよう支援することも大切な目的のひとつです。
介護が必要になっても、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう支える仕組みが介護保険なのです。
どんな人が利用できるの?
介護保険は、誰でも自由に利用できるわけではありません。
「65歳になったら誰でも利用できるの?」
「40代や50代では使えないの?」
このような疑問を持つ方もいるでしょう。
介護保険を利用するためには、年齢や心身の状態など、いくつかの条件があります。
ここでは、どのような人が介護保険を利用できるのかを見ていきましょう。
原則65歳以上の人
介護保険は、原則65歳以上の方が対象です。
ただし、65歳になったら自動的に介護サービスを利用できるわけではありません。
介護保険サービスを利用するためには、市区町村に申請を行い、「要支援」または「要介護」の認定を受ける必要があります。
例えば、足腰が弱って歩くのが大変になったり、認知症の症状によって一人での生活に不安が出てきたりした場合には、介護保険サービスを利用できる可能性があります。
65歳以上の方は病気やけがの原因を問わず、要支援・要介護と認定されれば介護保険の対象となります。
40歳~64歳でも利用できる場合がある
介護保険は原則65歳以上の方が対象ですが、40歳から64歳までの方でも利用できる場合があります。
ただし、誰でも利用できるわけではありません。
この年齢の方が介護保険を利用するためには、国が定めた「特定疾病」が原因で介護や支援が必要になった場合に限られます。
特定疾病には、初老期における認知症や脳血管疾患、パーキンソン病などが含まれます。
そのため、40歳から64歳までの方がけがや病気によって介護が必要になった場合でも、原因となった病気が特定疾病に該当しなければ介護保険を利用することはできません。

もし介護保険の対象にならなくても、障害福祉サービスや医療費助成など、利用できる制度はほかにもあります。困った時は一人で悩まずに、市区町村などに相談してみてくださいね。
介護保険で利用できるサービス
介護保険では、介護が必要になった方の生活を支えるために、さまざまなサービスを利用することができます。
介護保険と聞くと、デイサービスや施設入所を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、自宅での生活を支えるサービスや、住まいを安全に整えるための支援なども利用できます。
ここでは、介護保険で利用できる主なサービスを見ていきましょう。
自宅で受けられるサービス
介護保険では、住み慣れた自宅で生活を続けられるよう、さまざまな在宅サービスを利用することができます。
例えば、ホームヘルパーが自宅を訪問して掃除や買い物、食事の準備などを手伝う訪問介護があります。また、看護師が自宅を訪問して健康管理や医療的なケアを行う訪問看護を利用できる場合もあります。
日中に施設へ通い、食事や入浴、レクリエーションなどを受けられるデイサービスも、多くの方が利用しているサービスのひとつです。

デイサービスにはさまざまな種類があります。食事や入浴はなく、短時間で運動やリハビリだけを行って帰るタイプもありますよ。
介護が必要になっても、自宅での生活を続けながら必要な支援を受けられることは、介護保険の大きな特徴のひとつです。
施設で受けられるサービス
自宅での生活が難しくなった場合に、施設へ入所して介護を受けることもできます。
代表的な施設には、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、認知症の方が少人数で共同生活を送るグループホームなどがあります。
施設によって目的や対象となる方は異なりますが、食事や入浴、排せつなどの日常生活の支援を受けながら生活することができます。
「できるだけ自宅で暮らしたい」と考える方が多い一方で、介護する家族の負担や本人の状態によっては、施設で生活することが安心につながる場合もあります。
以前は「親を施設に入れるのはかわいそう」と考える方も少なくありませんでした。しかし最近では、本人が安心して生活できる環境を整えたり、介護する家族の負担を軽減したりするための前向きな選択肢のひとつとなっています。
施設での生活が、その人らしい暮らしや家族の安心につながることもあるのです。
自宅を暮らしやすくするサービス
介護保険では、介護サービスを利用するだけでなく、自宅を安全で暮らしやすい環境に整えるための支援を受けることもできます。
例えば、浴室やトイレ、玄関などに手すりを設置したり、つまずきやすい段差を解消したりする住宅改修があります。
また、車いすや歩行器、ベッド横の置き手すりなどの福祉用具をレンタルできるサービスもあります。
住み慣れた自宅で安心して暮らし続けるためには、介護サービスだけでなく、住まいの環境を整えることも大切です。
介護保険を利用するにはどうすればいい?
介護保険は、年齢が来たら自動的に利用できるようになるわけではありません。
サービスを利用するためには、市区町村へ申請を行い、要支援または要介護の認定を受ける必要があります。
「何から始めればいいの?」
「申請したらすぐにサービスを利用できるの?」
と不安に感じる方もいるかもしれません。
ここでは、介護保険を利用するまでの基本的な流れを見ていきましょう。
まずは市区町村へ申請
介護保険サービスを利用したいと思ったら、まずは市区町村の介護保険担当窓口へ申請を行います。
介護保険は、65歳になったら自動的に利用できるようになるわけではありません。サービスを利用するためには、本人や家族が申請を行い、要支援・要介護認定を受ける必要があります。
申請は本人だけでなく、家族が行うこともできます。また、地域包括支援センターやケアマネジャーなどが申請を代行できる場合もあります。
「まだ申請するほどではないかも」と迷う方もいます。しかし、介護保険は申請してから認定結果が出るまで1〜2か月程度かかることがあります。
いざ支援が必要になった時に慌てないためにも、気になることがあれば早めに相談しておくと安心です。
認定調査を受ける
介護保険を申請すると、市区町村の調査員などが自宅や入院先を訪問し、認定調査を行います。
認定調査では、普段の生活の様子や心身の状態について確認します。例えば、歩行や食事、着替え、入浴などがどの程度できるか、認知症による物忘れはないかといった内容です。
「しっかり受け答えしなければ」と心配される方もいますが、試験ではありません。普段の生活で困っていることや支援が必要なことを、ありのまま伝えることが大切です。
調査の結果や主治医の意見書などをもとに、要支援・要介護認定が行われます。

認定調査の日だけ頑張ってしまう方もいますが、普段の様子をそのまま伝えることが大切ですよ!
要支援・要介護認定が出る
認定調査や主治医の意見書などをもとに審査が行われ、要支援または要介護の認定結果が通知されます。(自宅に介護保険証が郵送されます。)
認定区分は、要支援1・2、要介護1〜5の7段階に分かれており、介護の必要度によって決まります。
要支援と認定された場合は、介護予防を目的としたサービスを利用できます。要介護と認定された場合は、より幅広い介護サービスを利用することができます。
認定結果が気になる方も多いですが、大切なのは区分そのものではなく、今の生活に合った支援につながることです。まずは利用できるサービスについて相談してみましょう。
ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
認定結果が出たら、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら、利用するサービスを決めていきます。
ケアマネジャーは、本人や家族の希望を聞きながら、必要なサービスを組み合わせたケアプラン(サービスを利用するための計画書)を作成する専門職です。

要支援1・2の方は地域包括支援センター、要介護の方は民間のケアマネジャーが中心となって支援を行います。
「どのサービスを利用すればよいのか分からない」「自宅での生活を続けたい」など、一人ひとりの状況に合わせて相談できるので安心してくださいね。

いざという時に慌てないために
介護保険は、介護が必要になった時に利用できる心強い制度ですが、実際には「申請が必要だとは知らなかった」「どこに相談すればいいのか分からなかった」という方も少なくありません。
また、申請してすぐに利用できるわけではなく、認定結果が出るまでには一定の期間がかかります。そのため、困りごとが大きくなってから慌てて動き始めるよりも、元気なうちから制度について知っておくことが大切です。
さらに、この制度は介護が必要になってから利用するためだけのものではありません。介護予防に取り組みながら、できることを続け、その人らしい生活を長く続けることも大切な目的のひとつです。
もし親のことや自分の将来について少しでも気になることがあれば、この記事をきっかけに介護保険について知っておいていただければ嬉しいです。

