「健康のために運動したほうがいい」と分かっていても、いきなりジムに通ったり、本格的な筋トレを始めたりするのはハードルが高く感じますよね。
そんなときに始めやすいのがウォーキングですが、「歩くだけでも効果はあるの?」「どのくらい歩けばいい?」と気になることもあると思います。
この記事では、50代・60代がウォーキングを入口にして、今の生活や体力に合わせながら無理なく運動習慣を広げていく考え方を紹介します。
ウォーキングだけでも健康づくりの効果は期待できる
ウォーキングは、特別な道具がなくても始めやすく、日常の中に取り入れやすい運動です。
「歩くだけで本当に意味があるの?」と思うこともありますが、歩くことは身体活動のひとつで、健康づくりの土台になります。
まずは、ウォーキングがどのように健康づくりにつながるのかを見ていきましょう。
歩くことも立派な「身体活動」
「運動」と聞くと、ジョギングや筋トレ、スポーツなどを思い浮かべるかもしれません。けれど健康づくりでは、こうした運動だけでなく、日常生活の中で体を動かすことも「身体活動」に含まれます。
たとえば、買い物へ歩いて行く、駅まで歩く、家事でこまめに動くといったことも身体活動です。もちろん、ウォーキングもそのひとつです。
まとまった運動時間をつくらなくても、普段の生活の中で歩く時間や体を動かす時間を増やすことは、健康づくりにつながります。
そのため、「運動らしい運動をしていないから意味がない」と考える必要はありません。まずは今の生活の中にある「歩く」を、運動習慣の入口として考えてみると取り組みやすくなります。
まずは「今より少し多く動く」ことから
健康づくりの目安として歩数や運動時間が示されると、「その数字まで頑張らないと意味がない」と感じてしまうことがあります。
ですが、運動習慣がほとんどない人と、すでに毎日よく歩いている人では、同じ目標から始める必要はありません。大事なのは、現在の活動量を基準にして、今より少し多く体を動かすことです。
たとえば、いつもの買い物で少し歩く距離を増やしたり、座って過ごしていた時間の一部を散歩に変えたりするだけでも、身体活動は増やせます。
最初から「毎日○歩」と決めるよりも、今の生活の中で増やせそうなところを探すほうが、無理のない運動習慣につなげやすくなります。
どのくらい歩けばいい?8,000歩はひとつの目安
ウォーキングを始めると、「1日にどのくらい歩けばいいの?」という疑問が出てきます。
健康づくりの目安としてよく聞くのが「1日8,000歩」です。ただし、これは誰にとっても同じ目標というわけではありません。
年代や体力、普段の活動量によって考え方は少し変わります。ここでは、50代・60代が歩数の目安をどう受け止めればよいのか整理していきます。
年代によって身体活動の目安は少し違う
「1日8,000歩」という数字を見かけることがありますが、すべての年代に同じ目安が示されているわけではありません。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は歩行または同じくらい以上の強度の身体活動を1日60分以上(約8,000歩以上に相当)、65歳以上では1日40分以上(約6,000歩以上に相当)が目安とされています。

ここでいう60分、40分は、その時間ずっとウォーキングをしなければならないという意味ではありません。 通勤や買い物で歩く時間など、日常生活の中で体を動かす時間も含めて考えます。
また、65歳以上でも体力のある人では、成人と同程度の身体活動によって、さらに健康増進効果が期待できるとされています。年齢だけで区切るのではなく、今の体力や健康状態に合わせて考えることもポイントです。
数字に届かなければ意味がないわけではない
「8,000歩が目安」と聞くと、5,000歩しか歩けなかった日は意味がないように感じるかもしれません。
でも、8,000歩や6,000歩は、達成できたかどうかを判定する合格ラインではありません。
厚生労働省のガイドでも、目安に届かなくても少しでも身体活動を行うことが勧められています。特に、普段の身体活動が少ない人ほど、今より少し活動量を増やすことで健康への効果を得やすいと考えられています。
たとえば普段3,000歩ほどの人なら、いきなり8,000歩を目指すのではなく、まず3,500歩、4,000歩と増やしていく考え方でもよいのです。
目安の数字を追いかけるより、自分の今の活動量から少しずつ増やしていく。 そのほうが体への負担も抑えながら、運動を生活の中に取り入れやすくなります。
8,000歩・6,000歩は“合格ライン”ではなく、健康づくりの目安
ウォーキングだけでは補いにくい運動もある
ウォーキングは始めやすく、健康づくりにも役立つ運動です。ただ、歩くことだけでは補いにくい動きもあります。
特に50代・60代では、筋力やバランス、柔軟性も意識しておきたいところです。ウォーキングを続けながら、ほかの動きを少し加えることで、より幅のある運動習慣にできます。
歩くことと筋力を保つ運動は役割が違う
ウォーキングは、心肺機能を保ったり、日常の活動量を増やしたりするのに取り入れやすい運動です。一方で、歩いているだけでは、筋肉に十分な負荷をかけにくい部分もあります。
そのため、ウォーキングとは別に、筋肉を意識して使う運動を組み合わせることも考えておきたいところです。
厚生労働省のガイドでは、成人・高齢者ともに筋力トレーニングを週2〜3日行うことが勧められています。
筋トレというと、ジムで重い器具を使うイメージがあるかもしれませんが、自分の体重を利用したスクワットや、椅子からの立ち座りなども筋力を使う運動になります。
ウォーキングと筋トレはどちらか一方を選ぶものではなく、歩くことで活動量を確保しながら、筋力を保つ運動も少し加えるという組み合わせが取り入れやすいでしょう。
ウォーキング=活動量を増やす
筋力トレーニング=筋肉に負荷をかける
筋力だけでなく、バランスや柔軟性も意識する
年齢を重ねても安心して動き続けるためには、筋力だけでなく、体のバランスを保つ力や、関節を動かしやすくする柔軟性も役立ちます。
特に65歳以上では、筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた「多要素な運動」が勧められています。
とはいえ、すべてを別々の運動として行う必要はありません。たとえば、体操やヨガ、ラジオ体操などには、体を曲げ伸ばししたり、姿勢を保ったりする動きが含まれています。
ウォーキングを基本にしながら、筋力・バランス・柔軟性を使う動きを少しずつ取り入れることで、運動の内容にも幅が出てきます。

ウォーキングを入口に、運動習慣を少しずつ広げる
ウォーキングを続けることは、運動習慣をつくるうえで良いスタートになります。
そこから少しずつ、筋力を使う運動や日常の中で体を動かす時間を増やしていけば、無理なく運動の幅を広げていけます。
ここでは、ウォーキングを土台にしながら、自分の生活に合った運動習慣へつなげる方法を見ていきます。
まずは普段どのくらい動いているかを知る
運動習慣をつくるとき、いきなり「毎日8,000歩」と目標を決めるより、まず確認したいのが普段の活動量です。
スマートフォンや歩数計を使って数日ほど歩数を見てみると、自分が普段どのくらい動いているのかが分かります。「思ったより歩いていた」「休日はほとんど動いていなかった」など、生活の特徴も見えてきます。
現在地が分かれば、「帰りに10分だけ歩く」「休日にも少し外へ出る」など、今の生活から無理なく増やせる量を考えやすくなります。
毎日の歩数に一喜一憂するためではなく、自分の生活を知るために確認する、くらいの使い方で十分です。
「運動する時間」だけでなく、日常の身体活動を増やす
運動というと、「ウォーキングのために30分確保する」といったまとまった時間を考えがちです。
もちろん散歩の時間をつくるのも良い方法ですが、毎日の生活には、ほかにも体を動かせる場面があります。
少し遠い店まで歩く、エレベーターではなく階段を使う、買い物や家事でこまめに動く。こうした動きも身体活動に含まれます。
忙しい日には、ウォーキングの時間を取れないこともあります。そんな日でも、日常の中で「動く場面」を少し増やすと考えると、運動を生活から切り離さずに続けやすくなります。
週2〜3日は筋力を使う運動も加える
ウォーキングが習慣になってきたら、筋力を使う運動も少し加えてみましょう。
厚生労働省のガイドでは、成人・高齢者ともに筋力トレーニングを週2〜3日行うことが勧められています。
ここでいう筋トレは、必ずしもトレーニングジムで器具を使うものだけではありません。スクワットやかかとの上げ下げ、椅子からの立ち座りなど、自分の体重を使った運動も含まれます。
毎日たくさん行うことよりも、ウォーキングとは違う刺激を筋肉に加えることがポイントです。「歩く日常」に、ときどき筋力を使う運動を加えるくらいから考えると取り入れやすくなります。
「座っている時間」を減らす
運動習慣を考えるときは、「どれだけ運動したか」だけでなく、長い時間座り続けていないかにも目を向けてみましょう。
たとえば朝にウォーキングをしていても、その後ずっと座ったまま過ごしていると、1日の中で体を動かす時間は少なくなります。
テレビを見る、読書をする、パソコンを使うなど座って過ごす時間が長くなったら、ときどき立ち上がって家の中を歩いたり、用事をひとつ済ませたりするだけでも、座りっぱなしを区切ることができます。
「運動する」と「座りすぎを減らす」は、別々に考えるのがポイントです。ウォーキングをしている日でも、日常の中でこまめに体を動かすことを意識してみましょう。

歩く・筋力を使う・座りっぱなしを減らす。この3つを意識することが大切です。
運動を続けるために「やりすぎない」ことも意識する
運動を始めると、「せっかくなら毎日歩こう」「目標の歩数まで頑張ろう」と力が入ることがあります。
でも、体力やこれまでの運動習慣には個人差があります。長く続けるためには、最初から頑張りすぎず、体の様子を見ながら少しずつ増やしていくことも意識したいところです。
最初から目標値を追いかけすぎない
「1日8,000歩」「筋トレは週2〜3日」といった目安を知ると、すぐにその数字を達成したくなることがあります。
ただ、普段あまり体を動かしていなかった人が、急に運動量を増やすと、筋肉や関節に負担がかかることもあります。
たとえば普段3,000歩ほどなら、まずは少し歩く時間を増やしてみる。慣れてきたら、さらに少し増やす。そんな進め方でも十分です。
健康づくりの目安は「最初から達成する数字」ではなく、少しずつ近づいていく目標として考えると、無理なく続けやすくなります。
痛みや体調の変化があるときは無理をしない
運動中にいつもと違う痛みや強い疲れを感じたときは、そのまま続けず、いったん休むようにします。
特に、胸の痛みや強い動悸、めまい、ふらつきなどがある場合は運動を中止し、必要に応じて医療機関に相談してください。
また、膝や腰に不安がある人や、持病があって運動量に迷う人は、主治医などに相談しながら始めると安心です。
「今日は少なめにしておこう」と調整できることも、運動を長く続けるためのひとつの方法です。
まとめ
ウォーキングは、運動を始めるきっかけとして取り入れやすい方法です。
大事なのは、歩数の数字に振り回されず、今の自分より少し多く動くこと。そこに筋力を使う運動や、座りっぱなしを減らす工夫を少しずつ加えていけば、無理のない運動習慣につながります。
できる範囲から続けて、自分の生活に合う形を見つけていきましょう。

無理なく続けられるくらいが、ちょうどいい運動習慣です。


