エンディングノートに興味を持っても、いざ書こうとすると「何を書けばいいんだろう」「どこまで決めておけばいいんだろう」と迷うことがあります。
エンディングノートは、もしものときに必要な情報だけでなく、自分の希望や家族に伝えておきたいこと、これからやりたいことを整理するためにも使えるノートです。その時点でわかっていることや考えていることを、少しずつ書き残していくことができます。
この記事では、エンディングノートに書く基本的な項目から、書くときのポイント、ノートの選び方や保管方法まで、初めて書く方にもわかりやすく紹介します。
終活全体について「何から考えればいい?」という方は、こちらの記事も参考にしてください。
エンディングノートとは?何のために書くもの?
エンディングノートというと、「亡くなったあとのために書くもの」という印象を持つ方もいると思います。
ですが、実際にはそれだけではありません。自分の基本情報や医療・介護の希望、家族に伝えておきたいことなどを整理しておくことで、もしものときに周囲が確認しやすくなります。
また、書きながら自分の考えを整理することで、これからどんなふうに暮らしていきたいかを考えるきっかけにもなります。
まずは、エンディングノートがどんな役割を持つものなのか、基本から見ていきましょう。
自分の情報や希望を整理して残す
エンディングノートには、氏名や連絡先といった基本情報だけでなく、医療や介護についての希望、財産や保険のこと、葬儀やお墓について考えていることなど、さまざまな内容を書き残せます。
こうした情報は、普段は頭の中でわかっているつもりでも、実際に書き出してみると「まだ考えていなかったこと」や「家族に伝えておきたいこと」が見えてくることがあります。
また、過去のことだけでなく、これから行きたい場所や続けたい趣味、会っておきたい人などを書くのも、エンディングノートの使い方のひとつです。
これまでのこと、今のこと、これからのことを整理して、自分の考えを言葉にしておく。
エンディングノートには、そんな役割があります。
家族が確認できる情報を残しておく
病気や事故で急に入院したときや、認知症などによって自分の希望を伝えにくくなったとき、家族がさまざまな情報を確認しなければならない場面があります。
たとえば、かかりつけ医や飲んでいる薬、加入している保険、銀行口座、連絡してほしい親族などです。普段から本人が管理していることほど、家族が詳しく知らないケースもあります。
介護の現場でも、「本人ならどうしたかったのだろう」と家族が判断に迷うことがあります。そんなとき、本人が以前に書いた言葉が残っていれば、考えを知るための手がかりになります。
エンディングノートは、家族に何かを任せるためのものというより、必要なときに確認できる情報や、自分の考えを共有しておくためのものと考えるとわかりやすいでしょう。

いざという時、『本人はどうしたかったんだろう』と、ご家族が迷う場面は実際によくあります。
遺言書とは役割が違う
エンディングノートと遺言書は、どちらも自分の考えを残すために使われますが、役割は異なります。
エンディングノートには、医療や介護についての希望、家族へのメッセージ、連絡先などを幅広く書くことができます。一方、遺言書は、財産を誰にどのように引き継ぐかなど、法律上の意思を残すためのものです。法務省も、エンディングノートには遺言のような法律上の効力はないと案内しています。
違いを簡単に整理すると、次のようになります。

そのため、家族に伝えておきたい希望や情報はエンディングノート、相続など法的な効力を持たせたい内容は遺言書と、役割を分けて考えるとわかりやすくなります。
何を書く?基本的な項目
エンディングノートに書く内容には、決まった形式があるわけではありませんが、家族が確認したい情報や、自分の希望として残しておきたいことには、いくつか共通する項目があります。
たとえば、連絡先や医療・介護のこと、お金や保険、葬儀やお墓についての考えなどです。さらに、家族へのメッセージや、これからやりたいことを書いておくこともできます。
ここでは、エンディングノートに書く基本的な項目を、内容ごとに分けて見ていきます。
自分の基本情報や連絡先
まず書きやすいのが、自分自身の基本情報や、家族・親しい人の連絡先です。
氏名、生年月日、住所、電話番号などに加えて、緊急時に連絡してほしい人や、離れて暮らす家族の連絡先などをまとめておくと、いざというときに確認しやすくなります。
普段はスマートフォンに入っている連絡先も、本人以外にはわからないことがあります。親族だけでなく、親しい友人や趣味の仲間など、「何かあったときに知らせてほしい人」がいれば、その人についても書いておくとよいでしょう。
また、家族構成や親族関係を簡単に整理しておくと、葬儀や各種手続きの際に連絡先を確認するときにも役立ちます。
基本情報/緊急連絡先/家族・親族/親しい友人
医療や介護について
病気や介護が必要になったときに備えて、現在の健康状態や、自分が考えていることも書き残せます。
たとえば、かかりつけの病院や診療科、持病、服用している薬、アレルギーなどは、急な受診や入院の際にも確認したい情報です。お薬手帳や診察券を保管している場所を書いておく方法もあります。
介護については、「できるだけ自宅で暮らしたい」「状況に応じて施設も考えたい」など、今の時点で考えていることを書いておくと、家族が本人の希望を知る手がかりになります。
もちろん、体調や生活環境によって考えが変わることもあります。その時点で自分がどう考えているかを言葉にしておくことが、家族と話し合うきっかけにもなります。

ご本人の考えが少しでも残っていると、ご家族が相談するときの手がかりになります。
お金・保険・契約について
お金や契約に関する情報は、本人しか把握していないものが意外と多いところです。
銀行口座、生命保険や医療保険、年金、不動産、クレジットカードなどについて、利用している金融機関や保険会社、関係する書類の保管場所を整理しておくと、必要になったときに確認しやすくなります。
また、スマートフォンやインターネットの契約、動画配信サービス、定期購入など、毎月料金が発生しているサービスについても書いておくと、入院や死亡後の手続きを進める際の手がかりになります。
すべての金額を細かく記録するというより、「どこに何があるのか」をわかる形にしておくと整理しやすくなります。
銀行口座・保険・年金・不動産・クレジットカード・継続中の契約
葬儀やお墓について
葬儀やお墓について考えていることも、エンディングノートに残しておける項目です。
たとえば、葬儀の規模や形式、呼んでほしい人、遺影に使ってほしい写真、お墓や納骨についての希望などがあります。菩提寺やすでに決まっているお墓がある場合は、その情報もまとめておくと確認しやすくなります。
このあたりは、すべてを具体的に決めておかなくても大丈夫です。
「家族だけで見送ってほしい」「お墓については家族と相談したい」など、今の時点で考えていることを言葉にしておくだけでも、家族が本人の希望を知る手がかりになります。
葬儀の希望/連絡してほしい人/遺影/お墓・納骨
大切な人へのメッセージや、これからやりたいこと
エンディングノートには、手続きに必要な情報だけでなく、家族や友人に伝えておきたい言葉を書くこともできます。
普段はなかなか口にする機会がない感謝の気持ちや、家族との思い出、自分が大事にしてきたことなどを残しておくのもひとつの使い方です。
また、「行ってみたい場所」「続けたい趣味」「会いたい人」「これから挑戦したいこと」など、これから先の楽しみを書いておくこともできます。
エンディングノートを書いていると、人生の終わりについて考えるだけでなく、これからの時間をどう過ごしたいかが見えてくることもあります。

書くときに意識したいポイント
エンディングノートは、最初からすべての項目を書きそろえるものではありません。
書きやすいところから始めて、まだ考えがまとまっていないことはその時点の気持ちを残し、状況が変われば書き直していく。そんなふうに少しずつ整えていくと、自分の考えも見えやすくなります。
ここでは、エンディングノートを書くときに意識しておきたい3つのポイントを見ていきます。
書きやすい項目から整理する
最初から医療や介護、葬儀などについて深く考えようとすると、手が止まりやすくなります。
まずは、氏名や住所、家族の連絡先、かかりつけ医など、確認すれば書ける情報から整理すると進めやすくなります。書き始めることで、「次はこれも書いておこう」と必要な項目が見えてくることもあります。
エンディングノートは、一度に完成させるというより、書けるところから少しずつ情報を足していくイメージで進めると取り組みやすいです。
基本情報 → 連絡先 → 医療・介護 → お金や葬儀など
決まっていないことは、今の考えを残しておく
エンディングノートを書いていると、「介護が必要になったらどこで暮らしたいか」「お墓をどうしたいか」など、まだ答えが決まっていない項目も出てきます。
そんなときは、「今は自宅で暮らしたいと思っている」「家族と相談して決めたい」「今後もう少し考えたい」など、その時点での考えを言葉にしておく方法があります。
あとから気持ちが変わったとしても、「以前はこう考えていた」という記録があれば、自分自身が考え直すときにも、家族と話すときにも手がかりになります。
内容が変わったら書き直す
エンディングノートに書いた内容は、年月がたつと変わることがあります。
引っ越しや家族構成の変化、病気や介護の状況、加入している保険や銀行口座など、生活の変化に合わせて情報を見直しておくと、必要なときに使いやすくなります。
希望や考え方も同じです。以前は「自宅で過ごしたい」と考えていても、体調や家族の状況によって気持ちが変わることがあります。
誕生日や年末など、自分が思い出しやすい時期にノートを開いて、今の情報や考えと合っているか確認する習慣をつくっておくと更新しやすくなります。

誕生日に一度見直す、など自分なりのタイミングを決めておくと続けやすいです。
ノートの選び方と保管するときの注意点
エンディングノートは、市販の専用ノートだけでなく、自治体などが配布している無料版や、手持ちのノートを使って作ることもできます。
どの形を選ぶかよりも、自分が書きやすく、あとから見直しやすいことがポイントです。また、医療やお金など大切な情報を書くこともあるため、書いたあとの保管方法にも気を配りたいところです。
ここでは、ノートの選び方と、保管するときに確認しておきたい点を見ていきます。
市販品・無料版・普通のノートから選べる
エンディングノートには、決まった様式はありません。
書店などで販売されている専用のエンディングノートは、医療や介護、財産、葬儀などの項目があらかじめ用意されているため、「何を書けばいいのかわからない」というときに使いやすいのが特徴です。
自治体や法務局などが、エンディングノートを無料で配布・公開していることもあります。まず内容を見てみたい場合は、住んでいる地域の自治体ホームページなどを確認してみるのもひとつの方法です。
また、手持ちのノートやファイルに、自分に必要な項目だけをまとめることもできます。形式よりも、自分が書き続けやすく、あとから見直しやすいものを選ぶことがポイントです。
家族に保管場所を伝えておく
エンディングノートを書いたら、どこに保管しているのかも考えておきます。
入院や介護などで本人が説明できない状況になったとき、家族がノートの存在を知らなければ、必要な情報を確認できません。
「寝室の引き出しに入れている」「書類をまとめたファイルと一緒に保管している」など、信頼できる家族には、エンディングノートがあることと保管場所を伝えておくと確認しやすくなります。
一方で、お金や保険など個人情報も含まれるため、普段から誰でも自由に見られる場所ではなく、必要な人が必要なときに確認できる保管方法を考えておきたいところです。

書くことと同じくらい、“どこにあるか”を伝えておくこともポイントです。
暗証番号やパスワードの扱いには注意する
銀行口座やクレジットカード、インターネット上のサービスなどについて書く場合は、暗証番号やパスワードの扱いにも注意が必要です。
エンディングノートに口座情報と暗証番号をまとめて書いてしまうと、紛失や盗難があった際に悪用されるリスクがあります。
エンディングノートには、利用している金融機関やサービス名、関係書類の保管場所などを書き、暗証番号やパスワードそのものは別の方法で管理すると情報を整理しやすくなります。
スマートフォンやネット銀行、SNSなど、デジタル上の契約や情報も増えています。「どんなサービスを利用しているか」「必要な情報をどこで管理しているか」まで整理しておくと、家族が手続きをするときの手がかりになります。
まとめ|自分のことを整理するところから始める
エンディングノートは、もしものときに必要な情報を残すだけでなく、自分が大切にしていることや、これからどう暮らしていきたいかを整理するためにも使えます。
書いていく中で、「家族に伝えておきたいこと」や「まだ考えていなかったこと」に気づくこともあります。考えや暮らしが変われば、そのときの自分に合わせて書き直していけます。
まずは連絡先やかかりつけ医など、今すぐ確認できることから書いてみると、自分にとって残しておきたい情報も少しずつ見えてきます。エンディングノートは、これからの暮らしを考えながら、自分のことを整理していく一冊にもなります。



